本記事では「SPAC」をテーマに上場できる仕組みやメリット、デメリットを解説します。
米国を中心にSPACを活用した上場を行う企業が増加。
SPACを活用する企業は、革新的な事業を行っており将来の成長を期待し投資を行う方も少なくありません。
目新しい事業性の裏に、SPACならではの問題点も存在します。
このため、メリットばかりでなく正しくデメリットも理解しておきましょう。
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「SPAC(特別買収目的会社)」とは?
SPACとは?
「Special Purpose Acquisition Company」の略
日本語で「特別買収目的会社」
※「裏口上場会社」とも呼ばれる
読み方はSPAC(スパック)です。
SPAC上場をした会社は、言葉の通り「買収を目的とした会社であり事業は行わない」という特徴があります。
上場により資金を集め、今後成長が期待される企業を買収・合併することを目的としていると覚えておきましょう。
制度自体は1980年代からありましたが、2020年以降SPAC上場を行う企業が増加傾向にあります。
2017年 | 34社 |
---|---|
2018年 | 46社 |
2019年 | 59社 |
2020年 | 248社 |
2021年 | 613社 |
2022年 | 85社 |
2023年 | 9社 |
SPAC上場のリスクが顕在化し、2022年以降減少傾向にある
「SPAC上場」が増加している2つの理由
SPAC上場が拡大している理由は以下の通りです。
- 著名人が「SPAC」に投資
- 世界的な金余りにより「SPAC」に資金が流入
順番に解説します。
理由①著名人が「SPAC」に投資
SPACの増加理由は著名人の効果が考えられます。
ベルナール・アルノー氏(ルイヴィトンのオーナー)がヨーロッパの金融セクターに焦点を当てたSPACに投資を実施。
その他にも以下著名人がスポンサーとして参加しています。
シャキール・オニール氏(元NBA選手)
コリン・キャパニック(元NFL選手)
このため、SPAC企業の知名度が上昇しているのも背景にあると言えるでしょう。
理由②世界的な金余りにより「SPAC」に資金が流入
2021年各国中央銀行の強力な金融緩和の影響で、米国株を中心に好調な株価推移となりました。
結果、一時的に投資先を探している「金余り」状態となった
新たな投資先として、SPAC企業に資金が集まる事例が多く見られました。
資金が容易に集まる状況のため、SPAC上場に拍車をかけたと言えるでしょう。
「SPAC」上場の仕組み【4STEP】
SPACが上場する一連の流れを4STEPで解説します。
STEP①空っぽの会社を設立し上場させる
SPAC上場はあくまで買収・合併を目的とした会社であり経営を行っていません。
このため「売上」、「利益」など無い空っぽの状態で上場を実施。
STEP②上場後投資家から資金を集める
続いて、投資先候補をリストアップ。
投資先情報を開示し、投資家から資金を集めます。
結果、事業を行っていないにも関わらず多額の資金を保有する会社となります。
STEP③投資先を見つけ買収する
続いて、実際に投資先を買収します。
- 投資先を選定~買収許可を株主投票にかける
- 株主承認を得た後、買収先と交渉を開始
- 交渉成立~投資先の買収を行う
結果、空っぽだったSPAC会社は買収先の会社に生まれ変わります。
STEP④ティッカーシンボル(社名)を変更し事業を行う
買収・合併が決定後、ティッカーシンボル(社名)を変更。
電気トラックを製造するローズタウン・モーターズはダイアモンドピークに買収される
ティッカーシンボルは「DPHC」から「RIDE」に変更
ティッカー変更後、企業成長に向けて事業が行われます。
「SPAC(特別買収目的会社)」3つのメリット
SPAC上場を行うメリットは以下の通りです。
メリット①未公開株を手軽に購入できる
通常「未公開株」は、富裕層や企業など一部に限られた投資となります。
- ベンチャーキャピタル(VC)
- エンジェル投資家
- 著名人
一方、SPACの場合個人投資家も手軽に未公開株を売買することが可能。
このため、SPACは投資企業のみならず投資家側にもメリットがあると言えるでしょう。
メリット②手頃な価格で投資できる
SPACの上場時株価は「10ドル」からスタートするというルールがあります。
このため、日本円にして約1,500円前後から投資ができるという手頃さもメリットと言えるでしょう。
メリット③簡単に上場ができる
SPAC上場を活用することで、企業側のメリットもあります。
上場を行うには審査にお金と時間が必要です。
また、業績や財務内容によって上場審査が通らない企業も少なくありません。
一方、SPACの買収・合併による上場は、通常の新規株式公開に比べコストが安く、上場の準備期間を短縮することができます。
また、既に上場が行われているため業績、財務の影響を受けない点もメリットです。
「SPAC(特別買収目的会社)」のデメリット【問題点】
SPACにはデメリットも存在するため注意しましょう。
デメリット①リスクが高い投資先である
SPACには買収・合併企業の上場審査がありません。
このため、高いパフォーマンスを期待して買収した会社は「不祥事だらけのゴミだった」という可能性があります。
優良な会社であればSPACのような「裏口上場」をする必要が無い
SPACに買収される企業は様々な裏事情があると言える
例:SPAC銘柄「RIDE」
新興EV自動車メーカー「ローズタウン・モーターズ(RIDE)」は、受注数の虚偽報告を行う。
上場株価10分の1に当たる1.14ドルの株価で推移
目新しい事業性だけに注目するのではなく、リスクの点も理解しておきましょう。
2023年RIDEは上場廃止を発表
デメリット②投資不適格の企業が買収される可能性がある
SPACは上場後「2年以内に買収先を決定する」というルールが存在します。
2年以内に買収先が決定しなかった場合、出資者に資金が返金。
SPAC上場後、買収先が見つかるのは「4割程度」と言われています。
このため、出資者への返金を避けるために「あまりイケていない企業」への買収が実施されるリスクが存在。
通常SPAC銘柄は時価総額4~5倍の企業が買収先ターゲットとなる
それだけ大きな時価総額かつ優良な企業はそうそう存在しない
【参考】「SPAC」銘柄一覧
SPAC銘柄を一部抜粋します。
※スマホの方はスライドできます
会社名 | ティッカー | 事業内容 |
---|---|---|
ローズタウンモーターズ ※上場廃止 |
RIDE | EVピックアップトラック |
ドラフトキングス | DNKG | オンラインカジノ |
アダプトヘルス | AHCO | 在宅医療ソリューション |
イミュノバンド | IMVT | バイオ医薬品会社 |
スキルズ | SKLZ | ゲームアプリ |
ルミナー・テクノロジーズ | LAZR | 自動運転ソフトウェア |
二コラ | NKLA | 電気自動車・燃料電池車メーカー |
買収先の事業内容を見ると、現在市場にはない先進的な会社が多いのが特徴です。
但し、一時的な話題性から急騰後株価が低迷している企業も少なくありません。
スキルズ(SKLZ)チャート
このため、投資をする際はリスクの高さについて理解しておきましょう。
SPAC銘柄は2021年をピークに多くの銘柄が右肩下がりの株価チャートとなっている
「SPAC(特別買収目的会社)」気になる質問
SPACに関する気になる質問を集めました。
Q1.SPACは日本で導入されていますか?
日本では現在、SPACを用いた上場は行われていません。
2022年より日本版SPACの在り方について研究会が開かれるも、引き続き検討段階にあります。
一方、日本企業が海外市場を通してSPAC上場をすることが可能です。
Q2.SPACで上場した日本企業は?
産業用ドローンなどを手掛けるスタートアップ企業の「A.L.I. Technologies」が2023年SPACにより米国NASDAQ市場に上場をしています。
空飛ぶバイク「XTURISMO(エックストゥーリズモ)」を世界限定200台受注するなど夢のある事業性で一時話題になりました。
一方、研究開発投資がかさみ大幅な赤字決算が続き、2023年12月破産申請を発表。
改めてSPAC企業のリスクが顕在化した事例の1つです。
米国企業分析を行う方法
米国企業に魅力はあるも、企業分析するのに苦労している投資家も少なくありません。
特に、SPAC企業はリスクが高く企業分析が必要不可欠です。
「moomoo」は、2022年10月27日誕生した新しい次世代型金融情報アプリ。
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SPAC(特別買収目的会社)【まとめ】
本記事では「SPAC」をテーマに上場できる仕組みやメリット、デメリットを解説しました。
SPAC銘柄は目新しい事業性から多額の資金が集まる傾向にあります。
但し、「リスクが高い投資先である」という点は注意が必要と言えるでしょう。
優良な会社であればSPACのような「裏口上場」をする必要が無い
SPACに買収される企業は様々な裏事情があると言える
リスクの高い投資先と認識し、投資をする際はポートフォリオの数%に抑えることをおすすめします。
以上、SPACメリット、デメリットまとめでした。
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